第24章 ペンさんの守護霊
それからまた私には、いつもの忙しくて楽しい日常に戻っていったが、ドズル社もそろそろ年末年始を迎えようとしていた。
年末年始は休みなのだが、その前にやれることをやって置こうという仕事が山盛りだったのだ。
私も幽霊とかに気にする余裕もないくらい忙しかった。あっちやこっちやと駆り出されている中、あるスタッフに呼び止められた。
「あ、ちょっといいですか?」
このおっとり口調の人は……と考える間もなく振り向くと、そこにはペンさんが立っていた。彼はドズル社のリソースパックなどを作っている裏方スタッフの一人で、おんりーさん担当のエンジニアでもあった。
「なんでしょう?」
「確認して欲しいことがあるんですが、いいですか?」
「はい、少しだけなら……」
「それは良かった」
と言って、私はペンさんのパソコンの前まで案内される。パソコン画面にはゲームの世界が映し出されていた。
「企画総括主が難しいっていうんですよ、これ。でも、初心者のアナタが出来たら、難しくないってことを証明出来ると思うんですが」とペンさんはゲーム内プレイヤーを動かして全体を見せてくれた。「来年に向けてワールドを作っているところなんです。来年にやってもいいんですけどね、修正点は先に見つけて置きたいので」
「これは、アスレですか?」
「はい、初級、中級、上級って分けるつもりなんですが……やってみてくれません?」
「いいですけど……今の仕事終わってからでいいですか?」
「あ、いいですよ。てか手伝いましょうか」
「助かります!」
そして私は、知らず知らずの内に来年へのドズル社へ貢献していくのだが、今はまだ、語る必要はないだろう。
「あれ、ペンさん、ここに何かついてますよ?」
「え、埃かな……?」
「あ……」
「取れました?」
「と、取れました!」
私はペンさんの背中についているものに何か取ったフリして素早く手を引っ込めた。
……ペンさんにも何かいる。フワフワした一瞬埃に見えた守護霊が。
私はまだまだ、守護霊や幽霊が視えることを、多くの人に秘密にしなくてはならなそうである。