第2章 最初から幽霊
「と、とにかく、触らないでください……えっと、このデータを別のパソコンに移すとかはどうですか?」
何か悪いことが起きませんように。私は今出来ることを考えながらなんとかそう提案してみる。おんさんの顔からずっと疑問と不審さは拭えなかったが、とりあえず頷いてはくれた。
「データは常にこっちに保存しているから、それは可能だが……」
「ありがとうございます。……これですね?」
「あ、ああ、そうだが……」
「じゃあこれをこっちのパソコンに……」
データの入ったメモリースティックを抜いて隣のパソコンに差してみる。想像していた通り、虫のような幽霊はデータにではなく、パソコンに取り憑いているみたいだ。ということは、これはバグではなく、パソコンの故障を予知している幽霊なのかもしれない。
「このパソコン、点検に出した方がいいかもしれません。故障してるのかも……」
とここまで話し終えて私はハッとする。ずっと自分ばかりが話していたことに気付いたからだ。
「すみません、急にこんなこと……えっと、これは……」
一切触っていないどころか自分が使っていたパソコンでもないのに、なぜ故障を疑っているのか、説明出来ずにおんさんを見やると、いつもの普通の顔に戻っていて逆に私が驚いた。
「分かりました。ドズルさんに連絡して点検を頼みます」
とおんさんが言ってくれて早速電話をしようとする。おんさん、柔軟過ぎる。詳しい話聞かずに対応してくれるなんて、私も何か協力しなくてはと思った。
「連絡は私がします。念の為、データが消えていないか確認してもらってもいいですか?」
「分かりました」