第16章 ぎぞくさんの守護霊とルザクさんの守護霊
音はなかった。ただ、水色の大鎌が止まったことだけは視えていた。
何が起きたのかとよくよく見れば、なんと黒い死神が、水色の死神の大鎌を素手で止めていたのである。死神ってこんなに大きくて細い指だったのかと見取れている内に、水色の死神が嗄れた声で喋り出したのだ……!
「なぜ止める、黒き死神よ。余と同じ死神であることは変わらないのだろう?」
すると黒い死神も、全くといっていい程同じ嗄れた声でこう言い返した。
「コイツは俺様の獲物だ。得体の知れぬ死神にくれてやるものではない」
私は声を失った。こうして死神の声を聞くのは初めてだ。もっとも、妖精の声だって今さっき聞いたばかりで私の頭は大混乱だったのだが。
「死神のやり取りには証人が必要と聞いたが?」
「証人ならここにおるだろう。そこにいる人間が先程から俺様たちを凝視しておる」
と言って、なんと黒い死神が私のことを指すのだ……!
「……大丈夫です?」
隣からおんりーさんに声を掛けられて私はハッと我に返る。私は大丈夫ですと返事をしようとしたが、おかしい。声が出ない。
「俺様たちと会話している時は、貴様は誰とも口が利けぬようにしてやった」と黒い死神が話す。「貴様に残された行動は二つだけ。俺様たちのやり取りの証人になるか、ならないか、首を振るだけで答えるしかなくなっている」
それから黒い死神が私の目の前で長く細い指を突き出し、顔のない暗闇と見つめ合った。