第15章 おんりーさんの守護霊と二体の死神
ぎぞくさんは、聞いていた通りおんりーさんのところにいた。
というのも、男女スタッフたちの集団が見えたから探しやすかったのだ。おんりーさんのその魅力は男女問わず惹かれるらしく、何かしらで人が集まりやすい。
「あの……」
私は二人に声を掛けようとして足を止めてしまった。ゾッとする寒気。私は目を上げた。
高い天井に届く程大きく広がった黒いモヤが、徐々にその姿を現した。それが鋭い鎌を持った死神だと分かった時、私がおんりーさんの方を見やるとその周りにいた守護天使アレイが散り散りと逃げ去る様子が視え、私はこれから何か悪いことが起こるのではと不安に思った。
どうにかしなくてはと思ったが、二人の周りにはすでに人だかりが出来ていて近寄り難かった。それに、もし近付けたとしてなんて声を掛けよう。……どうやって助けよう?
「あ、こんばんは」
そうこうしている内に、おんりーさんが私に気づいて声を掛けてくれた。見るとおんりーさんの両肩に怯えた三匹のアレイがいて、そこにいる死神から守る力がないように見えた。
ぎぞくさんはというと、そこでスタッフたちと取り合っているばかりで自分の周りに取り巻く黒い死神に気づいている様子はない。私はおんりーさんに挨拶を返しながらも他は上の空で、頭の中はぎぞくさんをどう助けたらいいか頭をフル回転させていた。
「ぎぞくさ……」
「あ、そこにいたんですね」
勇気を持ってまずはここから連れ出そうと私が呼び掛けた瞬間、別の声が飛んで来て私は振り向いた。
そこには、萌え袖男子がいた。
「ルザクくん」
「えっ、ルザクくんなの?!」
おんりーさんがそう言うと、ぎぞくさんが驚いたように萌え袖男子のルザクさんとやらを見やる。
だけど私はその可愛い男子より彼にまとわりつく恐ろしい何かに目が奪われていた。
ルザクさんにも、死神が憑いている……。
しかもそれはぎぞくさんのところにいる真っ黒な死神ではなく、なぜか水色っぽい死神だった。
黒以外の死神は見たことがなくて私が困惑していると、なんとぎぞくさんに向かって水色の大鎌を振り上げたのだ。危ない! と私が思わず声を上げてもきょとんとされるばかり。ここはまた私がぎぞくさんを押し倒すしかないのか? と迷ってしまった瞬間に水色の死神は大鎌を振り下ろした……。