第2章 閉じ込められた生活
「また帰ってきたら疲れ癒させてな。ほなまたな。好きやで。」
「うん、またね…好きだよ。」
直哉くんは満足した顔で部屋から出て行った。
「はぁ……」
直哉くんも私も中学校には一応在籍している。小学生の時は通っていたが中学生に入ってからは通っていない。禪院家には家庭教師のような専属の先生がいて勉強を教えてくれる。
私は机の上にノートを取り出して絵を描いた。昔から絵を描くのが好きだった。誰にも邪魔されないで自分を表現できたからだ。今は風景画を描いている。海沿いから海を見ながら月を見ている時を思い出して描いていく。
いつか両親と行った旅行。海が見える旅館に家族で泊まった。お母さんと入った温泉が気持ちよかったっけ。あれが最初で最後の家族の旅行だった。
お父さんは構築呪法を持っており呪力もそんなに弱くなく呪具や武器を作れるレベルに強かった。お母さんは窓で公務員をしていた。
ある日特級の呪霊が出たからと任務に行ったお父さんはそのまま帰って来なかった。お母さんは朝昼晩一日中何をしていても上の空になり夜はシクシクと泣く声が聞こえた。そんなお母さんが可哀想でそばに居てあげた。
でも数ヶ月前中学生に上がる前に、お母さんは学校から帰ると父の構築した呪具で首を斬って自殺していた。机には涙で滲んだ字で書いてある私への母の遺書があった。そこで初めて私にも術式がある事を知った。呪霊が沸いていて辺りは血だらけでそれ以上の事は覚えていない。
「出来た………」
久しぶりに満足できる絵を描けたと思う。少し目に涙が滲んでしまった。久しぶりにこんな感情になってしまったな。私はノートを置いて部屋の外に出ようと思った。