第2章 閉じ込められた生活
「はぁ………」
彼は首を傾げて私に聞く。
「それで名前はなんて言うんだよ。」
「桜潤です…」
「ふ〜ん。俺は甚爾、また会いに来るわ 桜潤」
彼はそう言い残すと廊下を歩いて行った。私は悪いことをした気分になり、すぐ部屋に向かった。部屋にすぐ入り戸を閉めると部屋の隅で座り込んだ。
「甚爾さん………」
不思議な人だった。私はずっと彼の事を考えていると眠くなってきていつのまにか寝落ちしてしまっていた。
ゆっくり目を覚ますと………部屋には夕暮れの明かりが入ってきて目の前に直哉くんが座っていた。
「なんや、やっと起きたんか桜潤ちゃん。」
「ん…………うぅ………直哉くん………」
「そうやで。任務終わってな帰ってきて真っ先に桜潤ちゃんに会いに来たら寝てるんやもん。かわええてずっと見とったわ。机の上のノートの絵描いて寝ちゃったん?」
「おかえりなさい………。そうみたい。」
私はそっと起き上がって座り着物を整えた。
「絵上手やなぁ。海の絵綺麗やったよ。色鉛筆でようあそこまで書けるな。」
「昔お母さんとお父さんといった場所なの。よく覚えてるんだ。」
直哉くんは私の話を優しい顔をして聞いてくれた。多分私の両親の事を知っているんだろう。私の顔を撫でてくれる。なのに急に冷めた低い声で核心をつくような事を言った。
「桜潤ちゃん、今日甚爾くんと会ったんやろ。」
私は彼の冷たい目から思わず目を仰向けて俯いてしまった。
「どうなん?桜潤ちゃんの口から聞きたいんやけど。」
「うん……戸を開けたらたまたま声を掛けられて………少し話しただけだよ。ごめんなさい。直哉くん………」
彼は私の顔から手を降ろした。俯いた先にある直哉くんの手は自分で白くなるまで握りしめていた。
「やっぱりな。今日この部屋向こうてる途中に甚爾くんに会ったんよ。そしたら桜潤ちゃんの話されたわ。甚爾くんカッコいいやろ。強いしな。」
「……………………………」
「やっぱりダメやな。桜潤ちゃん。嫌かも知んないけどな俺が一緒に居れへん時この部屋からでんとって。」
「うん………わかった。そうするね。ごめんなさい。」