第9章 day6 心操人使
お母さんがあまりに落ち込んでいるから早く元気になってもらいたくて両手をぎゅっと握りしめる
『私はみなさんを守るヒーローなので、何があっても大丈夫です』
不安を和らげるために目一杯の笑顔でそう言うとやっと顔が少し緩んでくれた
「実は私もヒーリングガールがデビューした時からの大ファンです‥‥ずっと応援しています‥っ」
『え〜っ!嬉しいです‥応援、本当にありがとうございます』
「猫の耳がこんなに似合う人も初めてみました‥」
『猫の耳‥ですか?』
言っている意味が分からなくて首を傾げる
「この子の個性‥‥猫なんです」
『ねこ‥』
繋いでいた手を解いてふと頭の上を触ると今朝撫でたねこちゃんと同じ
ふわふわの耳の感触
『えっ?!尻尾まで‥っ?!』
コスチュームの腰辺りがもぞもぞとすると思ったら長いしっぽまで生えていて
手のひらには肉球のようなものといつも短く整えている爪が少し鋭くなっていた
「ヒーリングガール‥ごめんなさい‥」
お母さんの後ろから現れた女の子は気付けばしゅるしゅると長い尻尾が生えていた
『私実は猫ちゃん大好きなの!まさか猫ちゃんに1日だけでもなれるなんて夢見たい!素敵な個性だね!』
もう一度その子を優しく撫でるとにっこりと可愛い笑顔で笑ってくれた
可愛い親子2人が最後まで深く頭を下げてくれるから
何度もぺこぺことお礼をしながら学校へと帰っていく
『猫になるだけだもんね‥私の個性は使えるみたいだし』
学校までの帰り道
転けて膝を擦りむいていた小さな子にはちゃんと治癒の個性が使えたからきっと大丈夫
それでもこの姿を誰かに見られちゃったら変に心配かけてしまうかもしれないからこそこそと寮の自分の部屋へと帰る
「おい‥‥その耳なんだ‥」
『爆豪くん?!』
「誘ってんのか‥」
『あ‥あのっ、えと‥これは‥っ』
気付けば距離を詰められて
隠していたはずの尻尾に指を絡められてびくりと反応してしまう
「可愛すぎんのも大概にしろや‥‥」
『爆豪くん‥あんまりそこ撫でないで‥っ』
尻尾の付け根を少し強く撫でられるとお腹にまで響くような感覚にまた身体がびくりと跳ねる