第15章 day11 切島鋭児郎
切島くんはいつもの様子で気丈に振る舞っているけれど
身体には硬化で塞ぎきれなかったであろう痛々しい傷がたくさんついていて
胸がきゅっと苦しくなった
少し呼吸の荒い身体をストレッチャーに寝かせて
そっと治癒の個性を施していく
大事な生徒の
この大事な身体から1秒でも早く
痛みを取り去るように
触れるだけでも痛むかもしれないから
出来るだけ優しく
切島くんの素肌に残る戦いの痕に触れていると
急にテントの外が騒がしくなり出した
「ヒーリングガールっ‥逃げて‥くださいっ‥」
『その怪我‥っ‥大丈夫ですか?!』
テントの中に駆け込んできたヒーローが腕から血を流している
「‥‥‥ファットはさっきのヴィランを警察に輸送中で‥‥とにかく‥逃げて‥」
『逃げません!あなたの傷を治療するまでは‥っ』
「先生っ?!」
「僕はっ‥いいですから‥っ」
怪我の痛みに顔を歪めるヒーローを抱き止めて
傷口を確かめていると気付けば入り口に誰か立っていた
「丁度いい人質おるやんか〜生で見ると最高に可愛えなぁ〜」
『あなたはっ‥』
「リーダーさえ返してくれたらなんも痛い事はせんから、こっちおいで?まぁ気持ちええ事はするかもしれんけどな」
その人がニヤリと笑いながら少しずつ距離を詰めてくる
他のヒーローはいない
後ろには切島くんと怪我を負ったヒーロー
治癒の個性は施したからもう痛みはないはずだけど
まだ完全に治りきってはいない2人をなんとかして守り切らないと
電波を操る個性なのか ファットさんに連絡しようと手にした携帯は圏外を示していた
「さぁこっちきてもらおか?」
さらにヴィランがこちらに近づこうとした時だった
「先生‥俺の後ろに‥」
さっきまでストレッチャーに横になっていた切島くんが立ち上がって
背中の後ろに隠すようにさっと私を引き寄せた
『ダメだよっ‥切島くん‥!』
庇おうと前に行こうとする身体を右手で静止されて
その身体が音を立てて硬化した
「先生のおかげでもう痛くもなんともねえ!今度は俺が助ける番!」