第8章 day5 緑谷出久
『個性の‥こと‥その‥治させてくれるかな‥?それに‥私も今日は緑谷くんに助けてもらってもいいでしょうか‥』
「個性の‥こと‥‥っ?!?!」
さっきまできょとんと私の目を見ていた大きな目がギョッと見開かれる
最近の緑谷くんの様子がおかしいと相澤先生から聞いて
早く助けてあげたいと思っていたら
今朝爆豪くんとお別れしたあと相澤先生に職員室へ呼び出された
「緑谷の事‥助けてやって欲しいんだ」
『もちろんです‥っ!』
「今日の放課後いつもの病院に行く日だったよな‥時間が少しで申し訳ないが近くに遊園地があるから気晴らしがてら一緒に行ってこい」
遊園地のチケットを2枚差し出される
『えっ‥いいんでしょうか‥ありがとうございます‥っ』
チケットを受け取るとグッと顔が近づいて耳元で囁かれる
「緑谷はガチガチに緊張しそうだしな‥先生もここ数日色々あったし‥ホテルもとったからゆっくりしておいで」
ふわりと大きな手で撫でられて
優しく微笑んだ先生はどこか悲しそうな顔をしていた
『相澤先生‥』
「そんな顔するな‥俺も行かせたくなくなる‥」
今度は髪の毛が乱れてしまうくらいわしゃわしゃと激しく頭を撫でられて
相澤先生が職員室から出て行った
『というわけで‥放課後、宜しくね』
いまだに目を見開いたままの顔を覗き込むと今まで息を止めていたのか
ぶはっと一気に息を吐いてみるみるうちに顔が真っ赤になっていった
「よろっ‥よろしく‥っ‥おねがいしまっす!!!」
すでにガチガチの緑谷くんを見ていると
なんだか私まで緊張してきてしまう
『じゃあ‥またね‥っ!』
緑谷くんを見送って
保健室へ戻ろうとすると後ろから声をかけられる
「身体‥‥大丈夫かよ‥」
ポケットに手を突っ込んだまま
こっちを見ずにずかずかと歩いて行く
ツンツンしてそうに見えて
ちゃんと優しい爆豪くんが可愛くて少し顔が緩んでしまう
『う‥うんっ‥!爆豪くんは大丈夫‥っ?』
「‥‥デクとヤるんか‥?」
『えっ‥?』
「いや‥なんでもねェ‥‥」
少し苛立ちを含んだ声でそう告げると
またそのまま歩いて行ってしまった