第1章 個性の話
相澤side
「これはもしやっ‥ずっと昔に一度‥いやでも本で読んだだけだしそんな事があるのか‥そうだとしたらこれは相当まずいんじゃないか‥僕たちはこの状況を‥」
ヒーローオタクこと緑谷出久が顔を赤く染めたまま何かを思い出すようにブツブツと話し出す
「緑谷‥何か知っていることがあるなら話せ」
「相澤先生っ‥でも本当にそうかどうか‥確信が持てないんですが‥」
「とりあえず先生をベッドに寝かせるから緑谷は着いてこい!それ以外の奴等は体調の変化があればすぐに報告!完全に室内の煙がなくなるまでは外で待機っ!」
「「はいっ!!」」
早口で捲し立てると大声で皆が返事をする
少し呼吸の安定してきた身体をゆっくりとベッドへとおろすと
おずおずと緑谷が話し出す
「僕が知ってるのは対男性の個性で‥先生がなぜ苦しそうなのかはわかりませんが‥僕達がかかっているのは‥
催淫
の個性かと思います‥」
「催淫‥?」
そういえばずいぶん昔
そんな個性の話を聞いた事があるような気もする‥
「好意を寄せている人への‥その‥欲求が‥抑えられなくなるというっ‥個性で‥その個性を解くには‥‥っ」
「その先は‥大丈夫だ」
顔から火が出そうな程に真っ赤になる緑谷を止める
その個性を解くには
その意中の相手との性行為が必要となる
それも一度で解けるものもあれば
何度も何度もしてようやく解けるものもいる
そんな厄介な個性
ずいぶん昔の話だと思っていたが‥
目の前の寝顔を見てどうしようもなく高揚する身体が本当だと物語っている
「緑谷‥お前は大丈夫か‥?」
苦しそうな顔
もしクラスの中に彼女でもいればいいんだが
生憎一年の女子はA組、B組共に出払っている
「だいっ‥じょうぶです‥それより僕‥皆んなの様子を見てきます!」
苦しそうに大丈夫と呟かれた言葉
緑谷の瞳は真っ直ぐにベッドに横たわる先生を捉えていた
暫くして寮内の煙が全て引いていき
安全を確認した生徒たちがぞろぞろと戻ってきた
「俺の身体‥どうなっちまったんだ‥?」
いつも冷静な轟までもが顔を赤くして呼吸を乱している