第4章 day2 night 荼毘
緑谷side
昨日の夜から発現した個性の印が熱を持ってなかなか寝付けず
朝練も兼ねて早朝から外を走っていると轟くんの姿をみつける
「とどろきくー‥!?」
声を掛けようとして慌てて両手で口を塞ぐ
まるで誘惑されているような甘い香りが漂ってきたかと思うと
先生の姿が見えて
その先生を轟くんがギュッと抱きしめた
「へ‥‥っ‥へやっ‥部屋に戻ろう‥‥うんっ‥」
親友のそんな姿を見たからか
それとも先生の甘い香りにあてられたのか
心臓がドキドキと大きく脈打って呼吸が乱れる
「困ったな‥‥この個性‥‥‥本当にどうにもならないのか‥」
ベッドの上に体を大の字に投げ出して
Tシャツからちらりと見える紫の印にため息を吐く
濃い紫のツルが僕の身体に纏わりつくように発現して
想いの強さを表すように無数の棘までくっきりと現れていた
身体を重ねることでしか解除できない個性
もちろん今まで恋人がいたこともないし
そんな行為をしたことなんてあるはずがなかった
お互いに意識して
好きになって
告白して
想いが通じ合って
遊園地でクレープを半分こしたり
たくさんのデートを重ねて
いつか‥‥
なんて夢見ていた僕にとってはまさに青天の霹靂だった
先生の事を想うだけで苦しくなる
気付けばあっという間に時間が過ぎていて
携帯の画面を見て飛び起きる
「轟くんあのあと大丈夫だったかな‥‥」
制服に着替えてからみんなの集まるソファに向かうけれどそこに轟くんの姿はない
「緑谷くん!轟くんを見なかったか?まだ朝ごはんも食べてないようでこのままだと授業に遅れてしまう!」
「飯田くん‥僕ちょっとみてくるね!」
轟くんの部屋をノックしてみるけど返事はない
「もしかして‥」
この一ヶ月
先生が使う事になった部屋の前で深呼吸をする
トントンとノックをして名前を呼ぶと中から轟くんの声がした
「轟くんは起きていただろうか?!‥‥緑谷くん?顔が赤いが大丈夫か?」
「えっ?!そうかな?!大丈夫だよ!」
火照る身体に上がる息
僕の身体もそろそろ限界を迎えていた