第1章 雨上がりの空に/十亀 条
条くんの瞳が私を見て、私の背中に腕を回して抱き締めた後、「ごめんな」と、申し訳なさそうに謝られた。
「んー、もう怒ってないよ。皆とも、仲直り出来たの?」
「うん」
「そっかぁー、そっかぁー。···良かったね、条くん」
条くんの心地よい体温を感じて、ポンポンと数回あやすように優しく背中を叩いた後、私は腕を離した。
···離したんだけど、何故か私は条くんに抱き締められたままだ。
あれれ···?
「条くん···?」
「···悪ぃ、抱きたくなった」
「え、ちょっと···、まっ、」
私を抱き締めたまま、条くんが私の首筋に顔を埋めてチュッとキスをした。
くすぐったさに声がうわずり、このままでは流されると条くんの肩に手を添えてグッと押すけれど、力の差は歴然で離れない。
「はぁっ、さっきからの柔らかいおっぱいが当たってぇ、···我慢出来なくなった」
墓穴掘ったかもしれない。
確かに、あんなに力いっぱい抱きしめれば、そりゃあ感触も伝わるか···。
「それに」と続ける条くん。
「高揚感でぇ、今いっぱいなのよ、俺···喧嘩は負けたけど、皆とも仲直り出来たし、こうしてに甘やかされて、幸せなのよ、俺」
「条くん···」
「だから俺、今に断られたらショックでぇ、···生きて行けなくなるかも」
しょぼんとする条くん。
いや、これは芝居だ芝居だとわかってても、私は断れない。
「いいよ。だけど、優しくしてね?」
「普段も、優しいでしょ?」
冗談混じりにくすっと笑いながら言うと、条くんの唇が私の唇に重ねられた。