第1章 雨上がりの空に/十亀 条
「あ!ちゃんだ!!」
どのくらいそうしていたのだろう。
兎耳山くんの声に反応して声のした方へ視線を向ければ、2人が私を見ていた。
「迎えに来たよ」
条くんの綺麗な緑の瞳が一瞬丸くなり、次の瞬間に細めて笑みを浮かべた。
「あぁ」
「うん!帰ろう」
まるで、昔の頃に戻ったようで私は、「あぁ、もう大丈夫」なんだって、3人で肩を並べて帰った。
からの···。
「いててて···ちょっとぉ。手当雑じゃない?」
「ほら、動かないでじっとしてて!」
あの後条くんの家にお邪魔して、条くんをお風呂に連行した後で部屋で手当をしていた。
背の高い条くん、まるでヤンチャな大型犬の世話をしてるみたいだ、とか言ったら多分怒る···いや、拗ねる?だろうなぁ。
顔に出来た擦り傷に、マキロンをシュッシュッと吹き当てて絆創膏を貼る。
今回はこの程度の喧嘩で済んで良かったけれど、心配する方の身にもなって欲しいものだ、と毎回思う。
「···悪い、怒ってるぅ?」
「···。」
「···、悪かった、心配かけて」
「···、喧嘩するなとは言わない。だけど、私がどれだけ心配したか思い知れ!」
私は条くんを思い切り抱きしめた。
首筋に顔を埋めればふわりとボディーソープの甘い匂いに混じる、条くんの匂い···。
私が背中に腕を回して力ずくで抱きしめると、条くんが「ちょ、おいっ···」と珍しく戸惑ったような声を出した。
どんだけ私が心配したか、思い知ればいい···。
だからどんなに苦しがろうが、離してあげない。