第1章 雨上がりの空に/十亀 条
透明なビニール傘に当たる雨粒の音が、パラパラとまばらになる。
ふと、足を止めて空を見上げて見れば、重たい灰色の雲が所々切れて、雲の切れ目からは鮮やかな水色の空が覗いて日が差し込んでいた。
足元に出来た水溜まりにも空が綺麗に反射して、傘から垂れた雫が落ちてキラキラと水面を打っていた。
(早く迎えに行こう)
雨が上がった空を見れば、オレンジ色に傾き始めた日差し。
今日は大きな喧嘩があるらしいし、条くんは強いけれど、···一抹の不安が胸を過ぎった。
心配で、早く会いたくて、足が自然と走り出していた。
*
「あ、じょっ、·······。」
やっと見つけた先には兎耳山くんと肩を並べて、穏やかに笑みを浮かべて笑う条くんの姿···。
私は声をかけるのを、途中で止めた。
2人の死角になる壁にそっと背を向けて、雨上がりのオレンジ色の空を見上げて胸が温かい物に満たされていく。
──良かったね、条くん。
兎耳山くんも以前のように瞳がキラキラと生気を取り戻していて、2人が分かち合えたのだと、ほっとした。
ほっとしたら私まで嬉しくなって、気がついたら笑っていてしまった。