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好意は好意のままでは終わらない

第11章 思い込み


社長は顔を引き攣らせながらも、嫌だとは言わなかった。それにしても、ウチの経理課・・・想像があっても、他の人は慣れたものでスルーしている。

何か、申し訳ないな。

「あ、だから・・・引継ぎ期間が長かったの?」
「うん。来週から、女性の新任が入社するから。今回は、妊娠しているから何かあったら困るから、留美子さんの担当になったんだ。ごめんね?」
「ううん。先輩じゃなくて、私で良かった。」
「優しいね、留美子さんは。」

あの後、後釜は丁重にお返ししたらしい。会社のロビーで騒動を起こして立ち入りを阻止され掛けたらしいけれど、社長秘書の敏腕で何とかなったらしい。

何なら、迷惑料としてウチに有利な仕事をもぎ取って来たらしい。営業部が小躍りしていたそうだ。

そして、社長も恩を売ったとかでほくそ笑んでいるらしい。


「それで、あの人はどうなったの?」
「ブラック企業に放り込むって。同じ経理課だけど、昔ならではの体育会系らしいよ。そこで、鍛えられるといいね?」
「うん。」
「フフ、留美子さんがこうして甘えてくれるの嬉しいなぁ。可愛い、僕の留美子さん。大好き、愛してる。」

彼にハグした私に、ご満悦らしい。

「僕も何度かお邪魔したことあるけど、あそこは皆が男なんだよね。厳しく躾けられるといいなぁ。」
「侑佑くん?」
「うん?」
「他に、何か聞いてる?」

あれ?彼が固まった。

「侑佑くん?何があったの?」
「言いたくない。」
「えっ、余計に知りたい。」
「不愉快しかならない。」
「それでも、教えて欲しい。お願い。」
「・・・留美子さんにそこまで言われたら仕方ない。アイツ・・・何を勘違いしたのか、留美子さんが寿退社するって決まっているのに、色目使って来たって言ってた。」
「はっ?色目?」
「何か、いざ結婚する日が近付いて来たら、マリッジブルーにでもなったのか、他の男の方が良いように見えて来たとか言ってるって。」

ちょっと、予想外な部分もあったんだな。

「私が、あの人に気がある様に思い込まれていたってこと?有り得ないんだけど。」
「そうだよね。僕もそう思う。」
「ねぇ、次の人は・・・今度は、侑佑くんに取り入ろうと考えたりとかはないのかな?」
「大丈夫だよ。僕も一緒に面談したんだけど、四十代前半のマダムだから。」
「そ、そう・・・。」
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