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好意は好意のままでは終わらない

第10章 マウント


「イギリスです。僕のルーツのある国ですし。一か月くらい向こうで過ごそうと思っているんです。」
「一か月もっ!!?素敵~っ。ねぇ、私も海外挙式参加してもいいわよ?招待してよ。」
「身内だけなんで、ごめんなさい。」
「ね、ねぇ、北野さん。私たち家族みたいに仲良かったよね?だから、私も・・・。」

残念・・・北野って誰よ。自分で馬脚を露してくれたから、私が何も言わなくても彼に真意は伝わったはず。そうしたら・・・容赦ないんだろうな。

「アハハ、どれだけ必死なのやら。」
「えっ?」
「碌に名前を憶えてもいないのに、家族みたいって笑えますよね。」

そうか、だからワザと私の名前を呼ばなかったのか。どれだけの付き合いか知る為に。

「名前・・・?」
「北野って誰のこと言っています?」
「えっ・・・北野・・・間違えた?」
「そのようですね。それに、彼女は友人から下の名前で呼ばれていると聞いています。それと、僕はこれでも彼女を愛していますから、横槍入れようとしたら・・・全力で潰すぞ?」

最後は、冷えた声。同級生たちは、挙動不審になって逃げていった。

「さ、邪魔者は排除したし行きましょう。」

もう、いつもの笑顔である。

「ごめんね、同級生が迷惑かけて。」
「何言っているんですか。僕は僕がどれだけ留美子さんを愛しているのか披露出来て満足ですよ?さっきの人たち、昨日見せてもらった高校二年の時のクラスメイトですよね。」

流石、記憶力がいい。卒アルだけじゃなく、普通のアルバムも見せたんだったっけ。

「侑佑くん、それでもありがとう。」
「どういたしまして。」

優しく微笑む彼に、周りのギャラリーは顔を赤くしていた。男女関係なく・・・。

境内に到着しては、二人で手を合わせて参拝。拝み終わったのは、私の方が先だった。手を合わせて目を閉じている彼の姿は、とてもとても綺麗だった。

スッと開いた目が、私に向けられる。光の加減で青く見えるこの瞳は、天が彼に与えた産物だろう。・・・って、彼に見惚れている場合じゃなかった。後の人の邪魔にならない様に、おみくじが売っている場所へと向かう。

「私って、くじ運とか壊滅的なんだよね。今までの人生で一度も大吉引いた事ないのよ。」
「僕は、殆どが大吉でしたね。」

でしょうね・・・。言われなくても何となく分かってた。



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