第5章 再会
「いえ、私も今回の事で社長からお褒めの言葉を頂けましたので。」
あぁ、本当に社長が好きなんだな・・・相良って。
そして、更に一週間後。
彼らは逮捕されていた。小林家からは放り出され、親子共々罪を償う事になったそうだ。浮気相手から多額の慰謝料を得られた奥さんたちは、それを元手に事業を始めるそうだ。逞しくて何より。
「あぁ、そう言えば・・・。手切れ金だけ渡して別れさせられた相手がいるって言ったよね?」
「うん。」
「養育費貰える様に、洋祐兄さんが動くって。」
「産んでたの?」
「みたいだよ。もう三歳になるって。一人目は。」
「一人目?」
「そういう相手が他にもいたって事だよ。罪を償った後も、大変だなって思う。それぞれ三人の子供をこの先、成人まで養わないといけないしね。」
眩暈がする。それぞれって、そんな事三人にしていたの?
「少しでも、心の痛みが和らぐといいね。」
「侑佑くん・・・。うん、そうだね。」
「留美子さんは大丈夫?」
「私?私なら、侑佑くんがいてくれるから大丈夫だよ。」
「じゃあ、僕と結婚してくれる?」
「えっ?あ、指輪・・・。」
「こんな僕だけど、受け入れて欲しい。好き、大好きだよ留美子さん。」
「ありがとう。喜んで。」
元カレの事は、巷でもちょっと有名な事件となった。
そんな中、彼は・・・私の実家に来ていた。
イケメン好きの母親は歓喜に沸き、父親も兄でさえも彼に見惚れていた。スーツ姿の彼はとても洗練されていて、私ですら目が離せなかった。
彼の結婚の申し出を諸手を上げて喜んでくれて、その日の家族はお祭りの様に賑やかだった。
でも・・・何処にでも、湧いて来るものなんだよね。他人の幸せを妬む人って。
縁を切った筈なのに、どうして今でも仲がいいとでも言う幼馴染が私の前に現れたんだ。地元から離れた、私が勤める会社の前に・・・。
「留美子、久しぶり~。」
その笑顔は、とても残忍でとても綺麗だった。
過去の私を想い出すには十分なくらいに、あの時と何ら変わらない他人を傷つけても何も思わない自分大好きな幼馴染がそこにいた。