第4章 悪足掻き
「それじゃあ、先に留美子さんの憂いを聞くよ。留美子さんの表情を陰らせている要因は何?」
「ねぇ、侑佑くん・・・このままで話すの?」
「僕は留美子さんの些細な感情の欠片でさえ、見過ごしたくないからね。それで、どうしたの?」
「たぶん・・・私を恨んで、何かしてくるんじゃないかなって。あの人、プライド高いから。」
「あぁ、そうだねぇ。でも、その無駄に高いプライドは僕がへし折ったから大丈夫だよ?」
驚いて、彼の顔を見る。
「どういう事?」
「留美子さんを会社に送った後、実はS商事にお邪魔していたんだ。兄さんと一緒に。」
「まさか、社長に直談判って・・・。」
「うん、その場に居合わせたよ。負け犬の遠吠えの様にキャンキャン吠えていたから、最初はS商事の社長が結構キツイことを言っていたんだけど、僕がトドメさしといた。」
「トドメ・・・?」
「うん。だから、大人しく支社に左遷されたんだよ。僕は仕事柄色んな企業とつながりがあるから、あの男が思う大きな会社とは縁は繋げないよって。」
「何かしたの?」
「うん?まぁ、悪い見本としてあの二人がやり取りしていたメールの文面を色んな企業に披露したんだ。仮名とは言ったけど、実名でね?」
排除の仕方が半端ない。
「後は・・・ついでに、元サヤもあり得ないってことも言っておいたよ。少しでもちょっかい掛けた事が分かったら、社会から弾いてやるとも言ったかな。」
「侑佑くん、遣り過ぎなんじゃ・・・。」
「僕はね?留美子さんには健やかにいて欲しいんだ。その為なら、容赦はしない。それに、僕の留美子さんをあんな扱いしておいて、更に気苦労させるなんてありえないから。例え、留美子さんが許しても僕は許さない。」
「私も許すつもりはないけど、程ほどにね?」
「留美子さんを悲しませる事はしない。それに、僕から留美子さんを取り上げさせることもね。」
それは、とても強い執着だった。
「侑佑くん?」
「なぁに?」
「ありがとね。守ってくれて。」
「僕が好きでしたことだから。」
「あ、ねぇ・・・実名ってことは、私の後輩の名前もってこと?」
「うん。あの女も無駄にプライド高いから同等の扱いしたよ。だから、たぶん・・・何処に行ってもダメじゃないかな。でも、仕事もせずに自由にしていたんだから自業自得だよ。」
そう言って、綺麗に笑う彼。そんな彼の首に抱き付いた。
