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好意は好意のままでは終わらない

第3章 社長と彼


「し、社長、如何されましたか?」
「あぁ、南野さん戻って来たんだね。ちょっとお願いがあって・・・いいかな?」

社長からのお願い?

「あの、どの様な事でしょう?」
「ウチの弟に、機嫌直す様に助言して貰えないかな?」


どうやら、昼休みに外へランチに行ったら、社内の女子社員たちに囲まれて散々話し掛けられて寒い季節じゃないのに、吹雪が吹いてたって言われた。

「最初は、私の立場を気遣ってそれなりに対応していたんだけど・・・ちょくちょくいるんだよね。引き際知らずに、攻めて来る女性が。」
「わ、分かりました。メール送ってみます。」
「ありがとう。よろしく頼むよ。」

笑顔で去って行った社長に、私は脱力感。そう言えば、そんな事言っていたなぁ。遠慮なかったのかぁ。大変だなぁ。

仕事を早く終わらせて、一緒に甘いもの買いに行こう。彼も好きなチョコケーキを所望する内容を送信。あ、直ぐに戻って来た。

全力で頑張るから、一緒に行こうね♡メールありがとう♡♡♡

うん、これでいいや。多分、機嫌は直ったと思われる。怒っている人が、♡は使わないだろう。そう思っておこう。

でも・・・終業後、ロビーには仏頂面の彼と社長が私を出迎えてくれたのだ。

「留美子さん・・・。」
「お、お疲れ様です。あの、どうかしたの?」
「S商事から連絡が来たんだ。」

それは、社長が苦笑いしながら返答してくれた思ってもみなかった内容だった。

因みに、S商事とは元カレのいる会社だ。ひょっとして、澄子さんが報告したのが原因?

「向こうの社長と、会食することになったんだ。」
「そうですか。お仕事なら仕方ないですね。」
「留美子さんも行くんだよ?」
「えっ?どうして・・・。」
「事情を知りたいみたい。」

それを聞いて、理由が分かった。嫁フェチって言われるだけあるわ。でも、まさか今回の事でご対面するなんて思ってもみなかった。

「あの・・・お疲れ様です。その・・・ウチの主人がすみません。」

そこには、申し訳なさそうな顔の先輩がいた。

「私が報告したばかりに、皆さんを巻き込むことになってしまいました。本当にすみません。」
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