第1章 魔王に召喚された夜
あ、ちょっと待って···今、巷で流行りのトリップとか言うやつ?それとも異世界移転?そもそもここ牢屋みたいな部屋だし···。何かのもらい事故だったら即刻元に戻して欲しい。
キャパオーバーした思考で考えていれば、重い扉の開く音がした。コツコツと革靴を鳴らし、入って来たのは黒髪に、ガーネットの様な深い色の赤い瞳に、すっと筋の通った鼻筋、唇は薄く血色の良い唇。高身長の、冷たく涼し気な印象のイケメンが入って来た。
「お前が俺の花嫁か」
「···、は?」
イケメンから発せられた台詞に間抜けな声が出てしまったのは、言うまでも無い。今何と···?「俺の花嫁」いやいやいや。
「お前が俺の花嫁かと聞いている」
(そんなん知らんがな···!)
「えーと、ち、···違うんじゃないでしょうか··?」
(て言うかここ何処!!ファンタジー?ファンタジーなの?)
「···ふーん」
「···ひっ」
イケメンからのジリジリ焼け付く様な視線に、思わず顔を背けた。
「顔を逸らすな、よく見せろ」
「わわっ!?」
イケメンの顔のドアップ!?
いやぁー!!?ヤバイヤバイヤバイ···。
顎に手が!、赤い綺麗な目に射抜かれるっ!!
説明しよう。
産まれてこの方、年齢=彼氏無し(23歳)喪女の私は、イケメンは遠くから眺めるのが至福であり、近くで見ると拒否反応が出るのである。