第8章 Humorless Joke【黒鋼 スパナ/ヴァルバラド】
「……笑えないジョークだな」
低い声で言うと、彼女は途端に表情を暗くする。何も言っていないのに、「何でそんなこと言うの?」と思っているのがありありと分かった。
「俺の嫁になるのは、確定した未来だろ。夢に見るまでもない。本当ならすぐにでも娶ってやりたいが、お前が錬金術の勉強をしたいというから、『我慢して』卒業まで待ってやっているんだ」
「へ? え……っと……?」
スパナの腕を離す彼女の手を、今度はスパナが掴んだ。
「どうした? 何を戸惑っているんだ? 俺の気持ちなんて、充分 理解しているだろう?」
反対の手で頬に触れ、ツ…と首筋まで下ろす。
「まだ分かっていないというなら、分からせてやろうか?」
ボボッと音が出そうなほど、彼女の顔が急速に赤くなった。
「わ、分かってる! 大丈夫!」
「何が分かってて、何が大丈夫なんだ?」
ムッとして言うと、彼女は「ほら……えっと、その……」と意味のない言葉を紡ぐ。
「す、スパナが……わたしのこと、その……す、好き? なこと……」
「何で疑問形なんだ」
ため息を吐くスパナに、彼女は「だってだって!」と駄々っ子のように捲し立てる。