第8章 Humorless Joke【黒鋼 スパナ/ヴァルバラド】
唇を離して彼女を正面から見据えると、戸惑いと不安から揺れる瞳に引き寄せられるように、彼女の唇に己の唇を重ねる。
2度3度と繰り返して解放すると、彼女はそのままスパナの方へ倒れ込んだ。
「諦めろ。お前がどれだけ不安がっても、周りが何を思おうと関係ない。『俺が』お前を手放す気がないんだ」
「そんなの、わたしだってだよ」
小さく身を乗り出して口づけてきた彼女が可愛くて、彼女の顎を少し下げ、開いた唇の隙間から舌を侵入させる。
深い口づけに震えながらも、精一杯応えようとする彼女が愛しくてたまらない。
きっと、これからも彼女は何度も壁にぶつかって、立ち止まって、立ち尽くして、何度でも悩むのだろう。
それは錬金術に関しても、恋愛に関しても。
そんなときに彼女の傍にいて、励ますのは、一生 自分だけでいい。
《 F i n ... 》