第7章 HAPPY END【富加宮 賢人/エスパーダ】
「言わなかったのは……私が富加宮くんを思い出せないから、ですか? ずっと思い出せないままだったら、恋人だったことをなかったことにしようって……だから……」
再び、頬に彼の大きな手のひらが触れると、誘うように賢人の方を向かされ、その瞳の熱に息を呑んだ。
そして……。
「ん……っ」
賢人の唇が、彼女の唇に重ねられる。
驚いて身を引くが、すぐに追いついてきて。
逃さないとでもいうように、後頭部を固定された。
触れては離れて、触れては離れて。角度を変えて何度も唇を合わせられる。
腕を持ち上げ、賢人の服をギュッと掴む。
頭の芯が熱くて、ピリピリして、溶けてしまいそうで……何も、考えられない。
永遠にも似た中で、賢人の唇が離れた。
「ずっと、お前に触れるのを我慢していた。抱きしめるのも、キスをするのも……本当は1秒だって、お前と離れていたくない」
彼女の肩口に頭をもたれさせ、まるで逃げられないようにしているのか、痛いくらいに腕を掴んでいる。
「思い出してくれって、いつも言いたかった。『富加宮くん』じゃなくて、『賢人くん』って、前みたいに名前で呼んでほしかった」
今まで隠してきたものを吐き出すように、取り留めなく、言葉が並ぶ。