第7章 HAPPY END【富加宮 賢人/エスパーダ】
「私、あなたが運ばれた夜、当直でしたけど……彼、あなたの手術中、すんごい死にそうな顔してましたよ。声をかけたら『恋人が事故に遭って』って……あなたのことでしょ?」
「そん、な……はずは……」
だって、彼は一言もそんなことを言わなかった。
けれど、そう言われると、これまでのことが全て……毎日 欠かさず見舞いに来てくれるのも、優しい表情も、言葉も……。
なら、賢人の言う恋人って……。
「そりゃそうでしょうよ。好きでもなきゃ、毎日 来れないでしょ。仕事帰りだって欠かさないんだもん」
ちょっと狙ってたんだけど、ガードが固すぎて無理だったのよねー。
そんな看護師の言葉は耳に入らず、彼女の思考はぐるぐると取り留めなく頭を回る。
自分が賢人の恋人? それは本当に?
何かの間違いなのでは?
自分に自信がなさすぎて、事実だと受け入れることはできない。
それに、もし本当なら、なぜ彼は教えてくれないのか。
「……もしかして……」
一つの可能性に思い至り、彼女は静かに目を閉じ、熱くなった目尻を乱暴に拭った。
* * *