第7章 HAPPY END【富加宮 賢人/エスパーダ】
「そうだ。お前は俺の恋人のことを気にしているようだが……」
「あ……えっと……」
余計なお世話だと言われるのだろうか。
身構える彼女に反して、賢人の表情は柔らかだった。
「変な気は遣わなくていい」
「そう……ですか……」
ちくり、と胸が痛んだ。
恋人はいない、という否定の言葉ではない。
分かっていたことではあるが、改めてそれを知って、悲しいと感じている自分がいた。
「話は終わりだ。また明日も来る」
はい、と渇いた声音で返事をすると、今度こそ、賢人は病室を出て行った。
* * *
「毎日 欠かさずいらしてますね、あのイケメン」
夜の体温を計りに来た若い女性の看護師に揶揄われ、顔が赤くなったのが分かった。
「えっと……」
何と言えばいいのか分からず俯くと、そんな様子が微笑ましいのか、楽しいのか。看護師は「ふふっ」と声を上げて笑う。
「羨ましい。私にもあんなイケメンな彼氏がいたらなぁ」
「い、いえ! とんでもありません! 富加宮くんは、私の彼氏では……」
すると、看護師は「え?」と頭にハテナを浮かべる。
「あの人、彼氏じゃないんですか?」
うんうん、と激しく肯定すると、看護師は顎に指を当てて、「うーん」と唸った。