第1章 The only dear star【浮世 英寿/ギーツ】
「貸してみろ」
彼女の手の中からネックレスを受け取り、英寿は身を乗り出す。それに合わせ、彼女も少し腰を浮かせた。
「ん……これでいいな」
満足そうに頷き、英寿は再び椅子に腰を下ろす。
「お前、ガード固そうに見せて無防備になることもあるからな。しっかり、『俺の』って名前を書いとかないと」
「だ、誰が無防備だって……! そんなことないでしょ。ちゃんとしてるわ」
英寿――そこから『A(エース)』のネックレスというわけか。本当にキザな男。
ムッとむくれる彼女に、英寿はイジワルく口角を上げる。
「そういって、この間 道案内を頼んできた男について行こうとしてたのは誰だっけな?」
「困ってたから助けようと思って……」
実際は悪質なナンパだったわけだが。
「財布を拾った礼に電話番号を聞かれたときは?」
「しっかり断ったでしょ」
かなりしつこく食い下がって困ってしまったが。
しばらく睨み合った末、英寿が小さくため息を吐いた。
「ま、いいか。それをつけてれば、嫌でも男がいるって分かるだろ」
男物のアクセサリー。確かに、恋人の存在を窺わせるアイテムだ。
「……で?」
「『で?』って何よ」
「お前は1ヶ月記念に何も用意してないんだろ? だったら、渡せるもんなんて一つだよな?」
トントンと自分の唇を示す彼が何を要求しているのか分かり、一気に顔が熱を持つ。