第7章 HAPPY END【富加宮 賢人/エスパーダ】
「あのね! 賢人はあなたの……!」
「芽依」
ガラッと扉が開き、賢人が戻ってくる。
「賢人……」
サッと芽依の顔が青ざめたのがなぜなのか、彼女には見当もつかなかった。
どこか険しい表情だったが、目が合うとにこりと微笑んでくれる。
「飛羽真、倫太郎も来ていたのか」
「賢人もエクレール・オ・ショコラ、食べますか?」
「あぁ」
一瞬 場の空気が凍ったように思えたが、気のせいだっただろうか。
皆と話すのは楽しい。
早く、全部 思い出せたらいいのに。
* * *
「そろそろ面会時間も終わりだな」
「すみません、今日も1日 いてもらって……」
「気にしなくていい。俺がやりたくてやっているんだ」
「でも……」
言い募ろうとして、賢人の長い指が唇に触れる。
「初めて会った頃から、お前は謝ってばかりだな。それより……」
「ありがとう、ございます」
「あぁ」
続きの言葉を推測して礼を言うと、賢人は微笑んだ。
飛羽真たちは先に帰っており、現在 病室は2人だけだ。
「じゃあ、看護師に急かされる前に出るとしよう」
「はい。お気をつけて」
また、と手を振る彼女に、賢人は足を止める。