第6章 Scarier than death【吾妻 道長/バッファ】
優しい温もりが額に触れ、頬を撫でる。
慣れ親しんだ温もりに安心感を覚えるのと同時に意識が浮上し、彼女はゆっくりと瞼を持ち上げた。
「道長くん……」
目を覚ましたばかりでやや掠れた声が出る。
軽く喉を鳴らして身を起こすと、彼は当然のように身体を支えてくれた。
道長の顔や腕から手にかけては手当てされている。
「大丈夫、じゃ、ないよね……」
「1週間の停学処分だ」
「……そっか……」
自分のせいだ。軽率な行動で、取り返しのつかいない事態を招いてしまった。
「あの人たちは……?」
「警察で事情聴取中。オマエに手ェ出そうとしたんだ。学校も退学処分を検討してる」
「退学……」
ブルッと恐怖が蘇ってくる。
力任せに手足を押さえつけられた感覚、身体を這う指先や舌の感触、そして――……彼以外に唇を許してしまったこと。
「おい、大丈夫か……」
伸ばされた道長の手に、彼女は無意識に身を強張らせた。怯えた空気が伝わったのか、彼は反射的に手を引く。
「悪い。オレがもっと早く駆けつけられれば……」
「そんなことない!」
道長に触れられることが怖かったわけではない。
身をギュッと引き寄せ、彼らに触れられた感触を消すようにこすった。