第6章 Scarier than death【吾妻 道長/バッファ】
怖いことがあった。本当に恐ろしいことが。
数日前、恋人である吾妻 道長が因縁をつけられた。
それ自体は決して珍しい話ではない。
素行が悪いわけではないのだが、態度や目つきが気に入らないとケンカをふっかけられては、気の短い彼はすぐに応じてしまう。
いつだって相手を返り討ちにしてしまう、ケンカっ早い恋人を持つ彼女としては、心配で気の休まるときはなかった。
だが、今回はそれだけでは終わらなかった。
下駄箱に入れられた『吾妻 道長を返してほしければ社会科準備室へ来い』という手紙。
今は使われていない社会科準備室は、滅多に人が来ないと言われている。
実際に彼女も、入学してから一度も訪れたことはない。
――急いで助けに行かなければ!
本人に電話をして確認する。
そんな些細なことすら思いつかず、彼女は慌てて社会科準備室へ向かった――それが罠だなんて考えもしなかった。
そこにいたのは、先日 道長が返り討ちにした三人の男子生徒。
彼らは報復として、彼女を襲おうと考えたのだった。
たすけて……たすけて、道長くん!
祈る思いで何度も何度も、心の中で叫んだ。
いつだって、助けてくれた。
困ったなと思ったときには駆けつけてくれる。
だから、きっと……今回だって……。
* * *