第6章 Scarier than death【吾妻 道長/バッファ】
ゴッと殴られた相手が社会科準備室のドアに激突する。
首を捻りながら拳を打ちつける彼に、男子生徒は掴み掛かったが、彼はすかさず頭突きを食らわせた。
「やめて……」
はだけた制服の胸元を引き寄せながら、彼女は震える声で呟いた。
相手は3人。
羽交い締めにされて殴り飛ばされ、腹を打ち据えられる。
それでも彼は、瞳に強い怒り――否、殺意に近い感情を宿し、相手に蹴りを入れた。
「もう、やめて……」
次第に、男子生徒3人は体力の限界か殴られた身体が痛むのか。
形勢は彼に傾き、リーダー格と思われる生徒に馬乗りになり、彼は力任せに殴り始めた。
「もういいよ!」
縋るようにして彼の腕に飛びついた彼女を、彼は「離せ!」と怒鳴りつけて振り払う。
一瞬 怯んでしまったが、血走った目と傷だらけの顔や手に意を決し、もう一度 彼を抱きしめた。
「もういい! わたしは大丈夫だから! お願い、もうやめて、道長くん……!」
ビクッと身体が強張ったことで、彼――吾妻 道長に声が届いたのだと分かり、ホッと安堵する。
同時に全身の力が抜け、意識が遠のいた。
* * *