第4章 Peace of mind【桜井 景和/タイクーン】
「教えてよ。俺にできることがあるならさ」
1人で抱え込みがちで、何もかも自分でどうにかしようとしてしまうから。
どれだけ力になれるか分からないし、話してどうにかなるわけじゃないかもしれないけれど。
それでも、彼女の抱えている問題を少しでも共有してもらいたい。
そんな景和の想いが通じたのか。
どこか頼りなさげに瞳を揺らしながら、訥々と話してくれた。
「何かあるわじゃないの。本当に。ただ……少し、周りの当たりが強くて……」
「当たりが強いって……もしかして、何か言われてる?」
異例のプロジェクトリーダー。一緒にやる人たちは自分よりも年上の先輩たち。
当然 面白くないだろうし、僻みややっかみを言われることもあるだろう。
「だったら俺が……」
「景和が?」
目を瞬かせ、彼女は小さく笑った。
「あ、無理だって思ってるでしょ」
「違う違う。うーん……やっぱり、ちょっとだけ思ったかも」
確かに、誰かを責めたり、怒ったりするのは苦手だ。
けれど、大切な彼女が嫌な目に遭っているのなら、自分だって……。
「俺だって、やるときはやれるよ。君のためなら特に。大切な子なんだから」
「景和……」
今度は、笑うことはなかった。
フッと肩の力が抜けたような、そんな表情でこちらを見てくる。