第3章 Change the destiny【手塚 海之/ライア】
夕日が完全に沈み、星が夜空で小さな光を散らす頃。
広場で客を待ちながらコインを弾いていた手塚のもとへ、彼女はゆっくりと足を進めた。
「占いを頼めますか?」
客を装って声を掛ければ、彼は目を丸くしてこちらを見る。
「……どうして来た?」
正面の椅子に腰を下ろし、彼女は問いに答えず自分の話を続ける。
「占って欲しいんです。手塚 海之と、わたしのことを」
夜の静かな空気が、2人の間を流れていく。
わずかな沈黙が切なくて、彼女は話を続けた。
「……告白、された。あなたの言う通り」
「受けなかったのか……?」
気心の知れた相手で、趣味も合う。一緒にいれば、きっと楽しい時間を過ごせただろう。
それでも……。
「仕方ないじゃない。運命の相手が本当にいるのなら、手塚 海之がいいって、そう思ったんだもの」
誰よりも近い場所で、静かに寄り添ってくれる。嬉しいときも、悲しいときも。
その距離感が、いつの間にか心地よく感じていた。
「だが、俺は……」
アンタの運命の相手ではない。
その言葉の続きを聞きたくなくて。
彼女は奥歯を噛み締め、手塚の胸ぐらを引き寄せた。
――ガチッ
「……っつ」
勢いよく唇を合わせたために、互いの歯がぶつかる。反射的に身を引いた手塚を、彼女はキッと睨んだ。
「運命じゃなかったらなんなの⁉︎ 諦めるの⁉︎ あなたにとってのわたしって、そんなもの⁉︎ わたしは……っ」
苦しいことがあってもいい。辛いことがあってもいい。