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特撮短編集【仮面ライダー】

第3章 Change the destiny【手塚 海之/ライア】


「わたしのことは諦めるって、そう言うの?」

「諦めるというのは少し違う」

「は?」

 彼の言いたいことが分からず、軽い苛立ちから眉を寄せる。すると、手塚は弄んでいたコインを指で真上に弾き、パシッとキャッチして結果を見せた。

「明日、アンタは顔見知りの男子生徒から告白を受けるだろう。その男が、アンタの本当の運命の相手だ」

 手塚の占いに心当たりがなかったわけではない。彼の言う『運命の相手』に。

 男子生徒の中ではよく話す相手で、趣味も合う。飾らない自分でいられる、気心の知れた数少ない友人だ。

「その男と結ばれれば、アンタは幸せになれるだろう」

 伝票を持って席を立った手塚の服の袖を、彼女はとっさに掴んだ。

 振り返った彼の表情から何も感じ取れなかったのは、出会ってから日が浅いからだろうか。悲しみも戸惑いも、不安も……分からなかった。

 だから、何か一言 言ってやろうとして、何も出てこない。

 何も言わない彼女の手をやんわりと解き、手塚は優しく頭を撫でてくる。

「大丈夫だ。俺の占いは当たる。アンタはちゃんと幸せになれる」

「……ち……」

 ――違う。そんな言葉が欲しいんじゃない。

 ならば、自分が求めている言葉とはなんだ。

 唇を噛みしめ、熱くなる目頭を持て余しながら、白くなるほどに拳を握りしめる。

 自分で自分が分からないまま、去って行く手塚の背中を見送ることもせず、彼女はただ俯いていた。

* * *

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