第3章 Change the destiny【手塚 海之/ライア】
「たとえ、幸せが約束されていなくても……あなたが隣にいてくれれば、それで……」
昨日 流せなかった涙が頬を伝う。
そうか、悲しかったのだ。
まるで、他の男と幸せになれと、そう言われたように感じられて。
この手塚 海之という男は、相手が幸せになれるのならば喜んで身を引く。そんな人間なのだろう。
愚かしいほどに相手の幸せを願ってしまえる男なのだろう。
そして、それほどに想われていることが嬉しくて……同じくらい、切なくて悲しい。
「あなたが諦めるというならそれでもいいわ。だったら、わたしが……わたしがこの恋を運命にする!」
赤いジャケットを掴んで啖呵を切ってみせる。
すると、手塚は目を丸くして、次に優しく手を掴んできた。おそるおそる見上げれば、あまり表情を変えない彼が、柔らかな笑みを浮かべている。
「あぁ、そうだな。アンタの言う通りだ」
コインを手に取り、手塚はそれを真上へ弾いた。
「運命は変えられる」
パシッと受け止め、出た面である表をこちらに向ける。
「俺がお前の運命だ」
息が、止まるかと思った。
震える手を伸ばし、彼の持つコインへと指を伸ばす。
「ほん、とに……?」
問い返すと、手塚は柔らかな笑みを深くし、自信に満ちた表情を見せる。
「俺の占いは当たる」
涙を拭いてくれる彼の手に頬を寄せ、彼女は何度も頷いた。
《 F i n ... 》