第3章 Change the destiny【手塚 海之/ライア】
「だが、一目見た瞬間に、俺はアンタに強く惹かれた。だから、運命の相手じゃなく、アンタに声を掛けたんだ」
一定の調子で、淡々と。声音には不釣り合いなほど熱く想いの丈をぶつけてくる。
いつもそうだ。この1週間、彼はいつもクールで、それなのに穏やかで、優しくて。こちらの心を見透かすように核心をついたことばかり言って、気遣ってくれていた。
ナンパに絡まれて不安で、声も出せなかった。
助けてもらって、礼を言ってその場を去ろうとした彼女に、手塚は「無理をするな」と手を握ってくれた。
今日はトラブルが続くだろうと言われた通り、不運が重なった1日。広場で彼女を待っていた手塚は、何も言わずに温かいカフェラテの缶を差し出してくれた。
たった1週間の出来事なのに、ずっと前から知っていたような気がして。
彼の声を聞くことが、隣にいることが、心地よいと感じるようになっていて。
だからか、手塚のこの言葉にショックを受けているのは。
そんな心情を顔に出さないように心掛けながら、彼女は絞り出すように、「それで?」と続きを促した。