第3章 Change the destiny【手塚 海之/ライア】
「……アンタに会いに来るのは、今日が最後だ」
大学から近い広場のファミレスでお茶をしていると、彼――手塚 海之が落ち着いた声音でそう切り出してきた。
「どういう、こと……?」
手塚の言葉に動揺している自分に気づき、彼女は内心で自嘲する。
何も、手塚とは恋人同士というわけでもない。
1週間前に広場で急に手を掴まれ、「俺の運命の相手」だと言われた。ただ……それだけ。
「なんで……急に……」
この1週間、手塚はたびたび自分の前に現れた。
降水確率0%だというのに、「今日は雨が降る」と折り畳み傘を渡してきたのは初日。
トラブルがあると言われた日には悪質なナンパに絡まれ、手塚に助けてもらった。
今日は良いことがあっただろうと、自分のことのように嬉しそうに尋ねてきたこともあった。
そして、そのどれもが当たっていた。
今日は、いつもと態度が少し違う。
そんな気がして、誘われるままにファミレスの食事について来た。
手塚は懐から出したコインを手で弄び、目を伏せる。
「俺は嘘を吐いた。アンタが俺の運命の相手だと言ったこと」
彼の話によれば、自分を占って「運命の相手に出会う」と出たのは本当らしい。しかし、その相手は彼女の一歩 前を歩いていた女性だった。