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七十二候

第31章 禾乃登(こくものすなわちみのる)


 思わず口に出てしまった、好きという言葉。自分でも驚いたし、それよりも徹がものすごく驚いていた。今年一番大きな声を出していたと思う。鼓膜が破れるかと思った。

「最近は徹のことをすごく考えるようになってた……。いつもそばにいてくれるのって徹だし……助けてくれるのも徹だった。今もすっごい救われた。これからもずっと一緒にいたし徹のことも応援したいし力になりたいと思ったら……言葉にしちゃってた」

「はは……なんだよ……」
 徹から力が抜けていくのが分かった。
「それ、俺が言いたかった。くそ……かっこ悪い……」
「へ?」

「俺こそ、萌のこと好き。ずっと好きだった。かれこれ小学生の頃から」

「ええええええええ!?」

 私も今年一番……体育祭のときくらいに大きな声が出てしまった。私の声に徹は目が飛び出そうなくらいに大きく見開いて驚いていた。
「ええええ? じゃないよ!なんで気が付かなかったの!?」
「だって女の子には誰にでも優しいし、でも私には下痢ツボ押すし。そういうの岩ちゃんにするやつと一緒だから同類だって思うじゃん」
「えっと……それは岩ちゃんのと違ってて、自分で言うのも恥ずかしいだけど、それ、好きの裏返しだから……」
 徹が顔を真っ赤にして言う。声もおもいっきりピアニッシモだった。

「うそぉ……女の子と付き合ったりしてたじゃん……」
「それは、萌が全然俺に興味ない感じだったから、萌のことを諦めたくて他の子と付き合ってみたんです! すごい悪いことをしたと思ってます! すぐにその子にバレたし……」

 信じられない。けど、今までの徹の言動を思い返すと、ピンときた。だんだん恥ずかしくなって俯く。
「ほんっとに萌は鈍感だからな。ずっと好きだったのになぜ気づかれなかったんだ……。俺は真正面から告白して振られたら、幼馴染の関係にヒビが入ると思うと怖くて、言えなかった。しかしなんで萌はサラっと言えるの……」
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