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七十二候

第30章 天地始粛(てんちはじめてさむし)


「今回は、シンプルに技術がっ……他校より、劣ってたの……」
 よしよし、と徹は黙って抱きしめながら私の頭を撫でた。
「ソロも、ダメだった。たぶん……う、仲田先生は気づいてる。全然練習通りじゃなかった……うう……」
「萌。この悔しさは後輩に託して。そして萌の音楽人生に繋げよう。萌の音楽はまだ何一つ終わってないんだから」
「うん……うん……」

 理性を取り戻しては、悔しい気持ちが再びこみ上げる。早く気持ちを落ち着けたかったのに、感情の上下が激しく、私はまだ涙が止まらなかった。
 その間、徹はずっと抱きしめて頭を撫でてくれた。

 私は心から徹の声や、温もり、抱きしめられて安心していた。そして徹に本音や弱さを見せられていることに気が付いた。

 あぁ、そうか。私。

「…………好き」

「え?」
「徹のこと、好きみたい」

「ええええええええ!?」
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