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七十二候

第3章 鴻雁北(こうがんかえる)


「あはは……頼もしい。ありがと。でも、無理しないでね」
「無理してないんだけど」
「そっか」
 苦笑いをする徹。私はどこか気まずくなり、頬杖をついて徹から目をそらした。


 青くて未熟。でもかけがえのない日々だった高校時代を思い起こさずにはいられない。
 私はそんな歌をミュージックアプリのお気に入りに登録し、応援ソングを口ずさみながら、二次オーディションへ向かった。足取りは軽かった。


 すっかり桜は散ってしまった。先日、強い雨風があったからだ。だけど、桜には若葉が顔を出している。これから新しい季節に進むのだ。私と共に。
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