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七十二候

第20章 温風至(あつかぜいたる)


 曇っているのに紫外線を感じる。日光に弱い私は日傘が必須だ。宮城もそれなりに暑かったけど、東京はとにかく日差しが痛くてとにかく暑い。昨日は涼しかったのに打って変わって再び顔をだした暑さにまた冷たいうどんが食べたくなる。冷製パスタでもいい。

 最近、ふたりの作曲家と出会った。
 ひとりは秋田先生の知り合いで、鈴川先生という。偶然にも私の家の近所にお住まいだそうで、秋田先生と一緒に食事をした際に、ご友人だという鈴川先生を紹介された。大変著名な方で、当然以前から存じ上げていた。50代だが見た目がとても若く、余裕のある大人の男性だ。とてもモテそうだなと思った。
 秋田先生は普通のおじいちゃんといった見た目だが、クラリネットの才能やその優しい人柄でモテモテな人生だったそうだ。あくまでも本人談だ。
 もう一人は同い年のAKI。私が徹のことを思い出してクラリネットで演奏したあの曲の編曲者と偶然出会ったのだ。
高校時代にソロコンテストで知り合った、同い年のトロンボーンの男の子のリサイタルを聴きに行ったときに彼から紹介された。小柄だけどパワフルで、彼のリサイタルでも曲を書いていた。

 この二人との出会いが私の人生に転機をもたらした。
 大学でも作曲については学んだことがあるし興味もあったが、自分でやってみようとはなかなかしなかった。だけどAKIの曲は素晴らしかった。色や情景が浮かんでくるようだった。私は自分で作品を生み出すことの素晴らしさを知った。
それは自分が得たものや感じたものを作品という形あるものにできること。多くの人にそれぞれの解釈で演奏してもらい、それがいろんな人に影響をもたらす。私のような演奏家とはまた違う音楽へのアプローチ。
 まぁ、今の私に多くのことをこなす余裕はない。しかし5、6月の怒涛の公演とは裏腹に7月から11月はそれぞれ月に2、3の公演しかない。それも以前からシリーズで続いているプログラムであったため練習自体に余裕があったが、自身のレッスンに吹奏楽コンクールシーズンを迎える学校へのレッスン、それからエキストラで演奏をする案件をいくつか抱えていた。そういえばSNSの配信が止まっていた。それでも、これまでの忙しさよりかはマシかもしれない。少しずつ環境に慣れていた。
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