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七十二候

第19章 半夏生(はんげしょうず)


 私が何か気にかけても徹が悩み事を相談してくれたことは、あまりない。そういう私も、岩ちゃんばかりに相談していた。
 弱みを見せない関係性。健全なのだろうか。でも徹が言いたくないことは無理に聞き出すのも違う。
 だんだんと食べたいものが分からなくなり、サラダとチキンとおにぎりを手に取り、レジに並んだ。
 その合間にメッセージを入れた。それが私たちを繋ぐ手段だった。
「7月になったね。暑くてもう夏バテしそう。でも、青城カラーを連想する7月は嫌いじゃないな」
 なんとくだらない……。まぁ、重たいメッセージを送るよりも絶対良い。
 徹からすぐに返信が来た。
「お疲れ様! どうせ冷たいうどんとか食べたんでしょ? 炭水化物以外も取りなさい! 青城カラーは俺も好き。中学から今もずっと青系のユニフォームだしね。今日は練習試合で遠征するからもう行くね」
 向こうは朝6時半。出発早いな。そして冷たいうどんを当ててきたことに驚く。私って単純なんだろうか。
「ご名答! でも夜ご飯はちゃんとするから許して。 それにしても朝早いね。いい試合になりますように。いってらっしゃい!」

 実は、今日のお昼に大学時代の後輩の女の子とうどん屋さんでランチをしたのだが、その際に遠距離恋愛が続かずにすぐに別れたと聞かされた。その後輩は、私も遠距離恋愛中であることは知らない。
 私は聞いてみた。「遠距離恋愛中のモチベーションって何?」と。すると、「なかったです」と返って来た。
 少なからずショックを受けた。だからこそ、今不安に襲われているのだ。
 でも、私たちは後輩と比べたらよく頑張っている方だと思うことにしよう。これでいいんだ。ただただ彼の進むべき道を進めるように応援しよう。私も今を頑張ろう。
 私は自分に言い聞かせた。
 雨上がりで湿度の高いためじんわり汗をかく。不快な気持ちを払拭させようと、レジ前にあったガリガリ君もかごに入れた。
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