第19章 半夏生(はんげしょうず)
個人的に7月をイメージするカラーはアクアブルーだと思っている。さわやかで夏を感じさせる色。青葉城西のユニフォームの色。徹の色。
そんな徹への想いとは裏腹に、私は徹のことで不安を覚えていた。今ももちろん、高校の頃もだけど、それぞれ理由が違った。
高3の頃のこの時期は、徹はいつものお調子者ではなく、少し雰囲気が変わっていた。女の子に話しかけられても、最低限の会話だけして、終わらせたらそっぽを向いていた。私は見て見ぬふりをしていたものの、休み時間に廊下を歩いていた岩ちゃんにそのことを話してみた。
「徹、どうしたの? 元気ない?」
「さあな。部活ではいつも通りだけど」
「ふーん。ほら見てよ。作り笑いしてる」
岩ちゃんは腕組をして考える。
「萌が気にかけてくれた喜ぶんじゃねぇの?」
え?なんで?と言おうとしたときに私たちは教室にいた徹と目が合う。すると徹がこっちに来た。
「何? 俺の陰口?」
「萌、言うことあるべ」
「ええ? えっと、元気ない?」
岩ちゃんに振られてとっさに聞いてみる。とっさのことだったので直球で聞いてしまった。
「あー。いろいろ考えることがあって」
徹は困ったように笑いながら頭をかいて答えた。
「そっか。何か力になれることがあったら言ってね」
徹にそう言ったところでチャイムが鳴った。結局何を考えていたのかは分からずじまいだった。
今の徹も、何かを考えているのかな。私だって考えているから、きっとそうなんだと思う。
音楽コンクールのレッスンの帰り道、ご飯を作る気にならずに入ったコンビニで冷たいうどんを手に取る。だけど、お昼も冷たいうどんを食べてしまったからどうしようと考えたけど「ちゃんと栄養を考えなさい」と徹に言われていたことを思い出し、うどんを手放した。
私は再び考え事を始めた。