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七十二候

第18章 菖蒲華(あやめはなさく)


 夜になり、徹から返信が来た。
「おはよう。日本でコンクールに入賞することは箔が付くし日本で活躍するためにも挑戦すべきだと思う。本当はそばで応援したいし、何か力になりたいけど、今回は聴きに行くのは日程が難しそう。でもできることがあればなんでもするよ。頑張ってね!!」
「その気持ちだけで充分。ありがとう!」

 なんだろうな。分かってるのに。なんでこの複雑な気持ちになるのか。
 日本で活躍する……言っていることは正しい。そうなんだけど、少し寂しい。自分が徹とどうしていくのか、未だに答えは出ていないけど、どうして欲しいのか知りたかった。
「会いたい」と返信を入力かけて、消した。言ったところで徹を困らせるだけだから。

 ベランダに出て星を見る。今見ている星たちは南半球では逆を向いているらしい。季節も逆。時差も12時間。
 遠いな……。すべてが逆であることが不安になる。
 私は徹と同じ方向を見て歩きたい。このまま歩み続けたら正解の道にたどり着けるのだろうか。すべての星たちに願いを込める。星の一つくらい私の願いを聞いてくれてもいいのではないか。
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