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七十二候

第12章 紅花栄(べにばなさかう)


 翌日の仙台公演には、両親と徹と岩ちゃんのお母さん、高校時代の部活の仲間が来てくれた。コンサートは盛況のうちに幕を閉じた。私は新米だし、ソリストでもなんでもないけど、プロとして頑張っている姿は見せられたのではないだろうか。
 終演後、ロビーに駆けつけてくれた仲間たち。高校卒業以来会っていない子たちがほとんどだった。みんな垢ぬけて綺麗な大人になっていた。仕事で忙しくしている子、今でも吹奏楽を続けている子、中には子連れの子もいて驚いた。
 感動したよ、すごかったよ、とたくさんの暖かい言葉をもらい、嬉しく思う。舞台上から両親の姿を見つけられて、私をしっかり見守ってくれていることを感じられた。ようやく生演奏を届けることができた。これからも、たくさんの音楽を届けたい。たくさんの喜んでもらいたいなと、再認識した。

 そして、終演後すぐに団員たちはすぐに東京へ戻ったが、私は再び実家へ戻る。次の仕事は明後日。東京で高校生へのレッスンだ。
 徹との約束の時間まで少しある。徹と岩ちゃんのお母さんが徹の家でお茶をしているらしく、東京から持ってきたお土産を持ってご挨拶へ向かう。
「萌ちゃん! 今日聴いたわよ。立派になって。おばさん感動しちゃった!」
 相変わらずパワフルな徹のお母さん。徹と同じ顔をしている。ものすごく美人だ。
「お土産ありがとうね。ところで徹はどうなの?あんまり連絡寄こさなくて」
「頑張っているようですよ。オリンピック代表選考が来年なので……」
「そうなのね。オリンピックくらい出てもらわないと、今まで投資した分回収できないわ」
 徹のお母さん、ちゃんと投資した分を回収しようとしているのはさすがだ。いや、私だって親には多大な投資をしてもらっている。しっかり利益を還元しなくては。
 徹のお母さん相変わらずのパワフルさに感銘を受けつつ演奏を聴いてくれたお礼をする。
「徹のこと、これからもよろしくね。二人がどんな未来になっても応援しているから」
「今は一人前になれるように頑張りたいです。ありがとうございます!」
「一にもこんなかわいい彼女ができていればいいのに」
 岩ちゃんのお母さんが言った。どこまでも男前な岩ちゃんに全然似ていなくて、柔和で素敵な方だ。
「岩ちゃんもアメリカで頑張っているし、きっと有名になってかわいい彼女、できます」
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