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七十二候

第2章 玄鳥至(つばめきたる)


 恐る恐る確認しようとすると、私が自分の名前を見つける前に徹が答えを言った。
「やったー! 萌と一緒だ。中1以来じゃね?」
 私は徹と同じ6組であることが判明した。岩ちゃんは5組だった。
「そ、そうだね。よろしくね。岩ちゃんも隣のクラスだし、徹のお守よろしくね」
「おう、任せとけ」
「ちょっと! なんで子ども扱い!?」
 私は少々複雑だった。彼らとは幼馴染であることは周囲も知ってはいたが、徹とはほどほどの距離感を保っていないと、周囲の女子たちの目が怖かった。学校へ向かう距離が長く感じるのもこれが理由だ。私はずっと女子たちの監視の目に晒されているような気がして、身動きがとれず息苦しかった。
 なにせ、徹はモテる。誰にでも優しいし(たぶん女子限定)、背が高くて、目がパッチリしていて、まつ毛まで長くて、通った鼻筋も唇も、とにかくバランスよく整っていて、他校でも話題になるほどのイケメンだ。
 私は中学の頃から、徹と仲良くしていると一部の女子から嫉妬されてきた。嫉妬が行き過ぎて陰口になることもあった。
 何で?私は幼稚園からの友達なのに、仲良くしたらいけないの?と、非難の言葉は思春期に入ったばかりの少女にはショックな出来事だった。
 後にその事実を知った徹はどうやら私をかばってくれたが、そういった目立つ行動もやめてほしいと言った。もちろん、徹のことは嫌いではない。これからも仲良くして欲しい。だから学校では極力目立たないように、話すときはお互いの家など目立たないところでしよう、と徹にお願いした。そうやって私は自分の身を守ってきた。
 その後、みんなが公立高校へ進学する中、私は徹から逃げるように吹奏楽が有名で家から近い私立の青葉城西高校に進学したが、徹と岩ちゃんもバレーボールのために青葉城西を選んだ。徹は白鳥沢学園の誘いを蹴ったらしい。
 幼馴染と再び一緒になって、嬉しいような複雑なような気持ちだったのを覚えている。だけどお互い示し合わせたように中学校と同じような距離感で平穏を保てていた。
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