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七十二候

第10章 竹笋生(たけのこしょうず)


 数時間後、岩ちゃんがノートを写真に撮って送ってくれた。
「ありがとう! 参考にさせていただきます!」とお礼をする。すると「及川に絶対連絡してやれよな~」と返ってきた。

 私は約束を果たすべく、勢いに任せて徹にメッセージを入れる。
「久しぶり! いろいろとバタバタしていて、すっかり連絡をしていなくてごめんね。近況とか報告したいから、電話してもいい? 都合のいい時間教えて!」

 返信が来たのは翌日のことだ。池袋の音楽ホールでアニメ曲のコンサートに出演する日だった。ちなみに、吹奏楽団の練習場はこの音楽ホール内にある。
「久しぶり。こっちも遠征があってしばらくブラジルに行ってたんだ。連絡入れられなくてごめんね。俺も萌の声聞きたい」

「おやおや?彼氏ですか?」
 楽屋でスマホを見ていたら大窪さんに話しかけられた。
「あ、はい……。時差があるから電話をするにもアポを入れなきゃならなくて」
 それを聞いた他の先輩たちもやってくる。
「雨宮さんの彼氏ってすごいイケメンじゃない?CAサン・フアンのホームページで見ちゃった」
「あはは・……。私にはもったいないです」
 本当にそうなのだ。私の彼はどこまでも格好いいやつなんだ。いつかお似合いだと言われたいんだ。

 私はすぐさま返信を入れる。
「ブラジル!? 特に問題なかった? いい試合できた? 今から本番があるから、終わったあとでもいいかな。日本の20時、サン・フアンの8時。もしくは明日の日本の9時でサン・フアンの21時とか」
「ブラジルは何度も行ってるし大丈夫だったよ。試合はボチボチ。本番頑張って! 疲れているだろうし、明日の日本時間9時にしよう」

 そうかそうか。ブラジル遠征で忙しくしていたのか。もっと早く把握しておくべきだったよなぁと反省する。なかなかだらしのない女だと自分を認識している。
 よし。徹に応援も貰ったことだし頑張れる。明日、いい報告をするためにもいい演奏をしよう。それから、昨日の岩ちゃんとのやりとりのことも話さなきゃ。
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