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七十二候

第80章 及川編#5


 口から心臓が飛び出るかと思った。まったく予期しなかった萌の言葉。
 嬉しいよりも驚きの方が勝る。俺は最近の試合でも出したことのないような大声で驚き、萌を驚かせた。
「最近は徹のことをすごく考えるようになってた……。いつもそばにいてくれるのって徹だし……助けてくれるのも徹だった。今もすっごい救われた。これからもずっと一緒にいたし徹のことも応援したいし力になりたいと思ったら……言葉にしちゃってた」

「はは……なんだよ……。それ、俺が言いたかった。くそ……かっこ悪い……」
「へ?」
 萌に先に言われてものすごくかっこ悪かった。だけど気持ちはちゃんと伝えたい。俺は後出しで告白した。
「俺こそ、萌のこと好き。ずっと好きだった。かれこれ小学生の頃から」

「ええええええええ!?」

 萌も、これまで出したことのない声量で同じく驚いていた。二度目の心臓が口から飛び出しそうになる感覚。身体中の血が一気に顔に集中するかのように顔が赤くなり、どっと汗をかいた。
「ええええ? じゃないよ!なんで気が付かなかったの!?」
「だって女の子には誰にでも優しいし、でも私には下痢ツボ押すし。そういうの岩ちゃんにするやつと一緒だから同類だって思うじゃん」
「えっと……それは岩ちゃんのと違ってて、自分で言うのも恥ずかしいだけど、それ、好きの裏返しだから……」
 小学生の男子みたいな好きな女の子への接し方をしていたことが晒され、穴があったら入りたい気持ちになる。
「うそぉ……女の子と付き合ったりしてたじゃん……」
「それは、萌が全然俺に興味ない感じだったから、萌のことを諦めたくて他の子と付き合ってみたんです! すごい悪いことをしたと思ってます! すぐにその子にバレたし……」
 だんだん、恥ずかしさよりも萌がこれまで俺の気持ちに気がつかなかったことや、サラッと気持ちを伝えられる度胸っぷりの方に腹が立ってきた。逆ギレ状態だ。
「ほんっとに萌は鈍感だからな。ずっと好きだったのになぜ気づかれなかったんだ……。俺は真正面から告白して振られたら、幼馴染の関係にヒビが入ると思うと怖くて、言えなかった。しかしなんで萌はサラっと言えるの……」
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