• テキストサイズ

七十二候

第77章 及川編#2


 それからは、萌との間には案の定、微妙な空気が流れた。彼女が出来た報告をすると、萌は明らかに俺とは距離を取った。彼女以上に俺と近い存在になってはならないという気遣い。
 自分が選んだことなのに。萌に告白することなく諦めて、他の女の子を利用するような真似をして。だけど、萌が自分から離れていくのは自分勝手だけど辛かった。

「萌が避けてる……」
 部活の帰り道。つい、岩ちゃんに愚痴ってしまった。
「当たり前だろボケ」
 予想できていたけど、やっぱり殴られた。でも、鼻血が出るほどではなく、加減されていたけど。でも痛いものは痛い。
「いったー。だって仕方ないよね? だって脈なしなんだもん。萌を忘れるには他の子を好きにならいと」
「俺なら当たって砕けるけどな。女々しい奴め」
 岩ちゃんはカッコイイ奴だ。男らしいし、俺より筋肉ゴリラだ。
「……萌を忘れることはできねぇだろ。俺たちは幼馴染だ。この事実は死んでも消えることはない」
 確かにそうだった。忘れようとしても、きっと無理なのだ。
「岩ちゃぁぁぁん。そうだよね、俺、やっぱり萌とは気まずくならずにいい関係でいたい」

 頼れる岩ちゃんは、萌と話をしてくれたのか、翌日、萌に話しかけられた。持って帰って欲しい頂き物のお菓子があるから、一緒に帰ろうと。びっくりしたけど、萌も一生懸命、幼馴染でいてくれようと考えてくれたことが嬉しかった。

 これから気持ちを新たに幼馴染を頑張ろうとしたところで、出鼻をくじかれた。
 あれから間もなく、萌が知らない男にデートに誘われた。萌が放課後にデートの誘いを受けている現場に遭遇してしまったのだ。内心穏やかではなかった。
 萌がどんな恋愛をしても自由なのに、やっぱり許せなかった。正直、その男はちょっとイケメンだった。爽やかだし。
 萌のことはお前なんかよりも俺の方が知っている。お前に何ができるんだ。そう言いたい気持ちが募る。それなのに、なんで萌はOKしたんだろう。俺が誘ったら、きっと嫌がったのに。
 居ても立っても居られなくなり、萌の部活終わりを下駄箱で待つことにした。
/ 234ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp