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七十二候

第72章 桜始開(さくらはじめてひらく)


 その後、仕事のない日に一緒に宮城に帰り、両家へ報告した。父も母も「よかったね。おめでとう」と泣いて喜んでくれた。私と徹の関係をずっと気にかけれくれていたから、本当に良い報告が出来て良かった。

 それから岩ちゃん、高校のみんな、バレー部の同期たちにも報告をした。
「やっとかよ!」「遅いわ!」「幸せにな!」みんなが徹を小突いた。
「萌を泣かしたらぶっ飛ばす」
 岩ちゃんはアメリカからメッセージで相変わらずの岩ちゃん節でお祝いをしてくれた。
「でもこれまで萌を悩ませてたんだろ? とりあえず今度会ったらまた殴るから、そのときは歯ぁ食いしばれよな!」
「ちょっと! 相変わらずの暴力!」
 そんなふたりのやりとりにほっこりした気持ちになった。
 私の方も、お世話になっている方々に報告し、しばらくお祭りのような騒ぎだった。


 徹の滞在した12日間はあっという間に過ぎた。その間に徹は1度だけ吹奏楽団の公演を聴いてくれた。最初で最後の徹に聴いてもらった公演は満員御礼状態で、吹奏楽オタクの喜ぶマニアックな曲目だらけだったが、徹は喜んでくれた。

 諸々の手続きに追われていると、あっという間に徹滞在の最終日を迎えた。
「萌、またちょっと離れちゃうけどさ。待ってるからね」
「うん、7月には行けるから待っててね」
「あと、これ」
「何?」
「手紙。俺が帰ったら読んで。萌の手紙の返信だから」
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