• テキストサイズ

七十二候

第71章 雀始巣(すずめはじめてすくう)


拝啓
 東京は小春日和が続いています。アルゼンチンの秋は深まってきた頃でしょうか?元気に過ごしていますか?
 ネットで簡単にやり取りが簡単にできる時代に、普段気恥ずかしくて言えないことを形に残したくなり、手紙を書くことにしました。

 フランスから日本に戻り、都内で桜を見たとき、徹と同じクラスになった高3の春の日を思い出しました。
 初夏は、徹の私に対する言動が気になって意識し始めて、秋を少し感じる季節になると、私が挫折し、同時に徹に救われた日。そして想いの通じ合ったあの音楽室でのことを思い出しました。
 秋が深まりすっかり肌寒くなった頃には、徹の進むべき道を決めるきっかけとなった春高の宮城県予選を思い出し、アルゼンチンに行く決意を聞いたときは、冬の澄んだ空気に映えた温かい光を思い出しました。
 次の春には徹はアルゼンチンに旅立ち、私たちは新しい季節をひとりで迎えました。

 お互い離れ離れでも、これまでたくさんの季節を一緒に過ごしたね。幼稚園から一緒に過ごした日々がとても楽しくて、苦しくて、青くて。学びも救いも、愛もたくさんありました。
 徹と歩んだ軌跡には一言では言い表せないたくさんの想いが詰まっています。

 当たり前の日々を一緒に過ごしたこと、日々の積み重ねで自然と導き出しされた自分たちの選んだ道。様々な経験が私という人を少しずつ作り上げていきました。
 一緒にいてくれて、ありがとう。離れないでいてくれて、ありがとう。

 そんな季節に沿うように、徹と過ごした日々を形にしたくなりました。たくさんの人に助けられながら、曲を書いてみました。
 この曲を『七十二候』と名付けました。
 伝えたいことがありすぎて曲が長くなってしまったけど、聴いて欲しいです。
 そして感じたことを教えてください。これまで私が得たものも想いも、全て詰め込んだつもりです。
/ 234ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp